ピンクのブラウス。
 
 
 
■ 部屋の近所には何本か桜があって、見上げると、気の早いのはすでにして綻び始めていた。
 せっかちだな、おまえ。
 手を伸ばして、先の枝を盗む。
 花瓶というものがないので、細い酒のグラスに差し、机の脇に置いて眺めている。
 
 
 
■ 零れた灰皿の灰を、懸命に片付ける桃色のブラウスがいた。
 若くはないが、年増だとも言えない。
 言いたいことは言うが、それが全部でもない。
 時折、「月に吠える」(註:朔太郎)のだけれども、それは女性だから仕方がない。
 やや、贅沢でもある。何がというと、口で言う好みが。
 仕方なく、贅沢にしているという気配もある。
 大人にはいろいろ事情があるのです。